インタビュー:2026年09月
経営者インタビュー株式会社山本工業
細部に宿る、確かな技。大規模な建設現場を中心に、培ってきた左官技術を受け継ぐ、株式会社山本工業。当たり前の仕事を、当たり前にきちんと納める。その積み重ねが信頼につながると思っています。
| 企業名 | 株式会社山本工業 |
|---|---|
| 住所 |
598-0021 大阪府泉佐野市日根野288-1 |
| 電話 | 072-468-0605 |
| FAX | 072-467-1961 |
| 社員数 | 15 名 |
|---|---|
| 主な業種 | 左官・防水 |
床や壁を平らに整え、建物の仕上がりを支える
株式会社山本工業は、どのような仕事をしている会社ですか?
当社が手掛けているのは左官工事です。左官というと、こてを使って壁を塗る昔ながらの仕事を思い浮かべる方が多いかもしれません。私たちは主に大規模な建設現場で、コンクリートの床を平らに仕上げたり、壁の凹凸を整えたり、窓枠の周囲にできる隙間を埋めたりしています。階段の段差をきれいに仕上げるのも仕事の一つです。 コンクリートを打ったままでは、その上に塗装や内装の仕上げを施せないことがあります。そこで私たちが下地を整え、次の職種の方が仕事を進められる状態にします。完成後には見えなくなる部分も少なくありませんが、床や壁がまっすぐで美しく仕上がるための土台をつくる、大切な役割を担っています。
建物が形になる過程を、最初から最後まで見届けられる
どのような建物や現場に関わっていますか?
病院やオフィスビル、データセンターをはじめ、多くの人が利用するさまざまな建物に携わっています。主な仕事の場は、複数の専門業者が協力して一つの建物をつくる大規模な建設現場です。大阪府内を中心に、近畿圏の現場へ出向くこともあります。 左官工事は、建物の骨組みをつくる段階から内装の仕上げに近い段階まで、長い期間にわたって必要とされます。工事が始まった頃は何もなかった場所に、壁や床ができ、設備が入り、建物として完成していく。その変化を間近で見られるのは、この仕事ならではの面白さです。自分たちが手を掛けた建物が地域に残り、利用されていくことにもやりがいを感じます。
素材と道具を使い分け、継ぎ目のない美しさをつくる
左官の技術が特に表れるのは、どのようなところですか?
左官の仕上がりは、材料の性質、こてを動かす速さ、力の入れ方、作業するタイミングによって変わります。広い面を仕上げるときは、途中で乾いて継ぎ目や色の違いが出ないよう、複数の職人が呼吸を合わせます。材料を配る人、塗り広げる人、表面を整える人が役割を分担し、途切れずに進めていきます。 使うこても、場所や仕上げ方に応じて大きさや形が異なります。職人が自分で使いやすいように道具を調整することもあります。また、材料を塗ったあとに磨き上げ、石のような質感を出す特殊左官にも対応しています。ベンチや洗い場など、機能だけでなく見た目が求められる場所を、手仕事で滑らかに仕上げる。経験を重ねるほど、材料と道具の扱い方が深まっていく仕事です。
約束した品質と工程を守る。それが次の仕事につながる
長く仕事を任されている理由は、どこにあると考えていますか?
特別なことよりも、求められた仕事をきちんと仕上げ、決められた工程に間に合わせ、安全に終えることが大切だと考えています。建設現場では、一つの仕事が遅れると、そのあとに続く多くの職種へ影響します。だからこそ、当たり前のことを当たり前に続けることが、何よりの信頼になります。 現場の状況は日々変わります。予定していた人数や作業量が変わったときには、同業者とのつながりを生かして応援を相談することもあります。反対に、仲間の会社が困っているときには当社から人を出すこともあります。自社だけで抱え込まず、横のつながりを大切にしながら、引き受けた仕事を最後まで納める。その積み重ねによって、次の現場でも声を掛けていただけているのだと思います。
苦しい時期を支えた、人とのつながりと現場への責任
会社を受け継いでから、どのような思いで経営してきましたか?
会社を受け継いだ頃には、景気の影響で仕事が減り、厳しい時期もありました。経営者として何をすべきか悩む中で支えになったのが、業界団体や同世代の経営者とのつながりです。仕事の状況や人の動きを共有し、相談できる相手がいたことで、一つずつ課題に向き合うことができました。 会社を続けるには、仕事を確保するだけでなく、現場で働く人が力を発揮できるようにする必要があります。最近では、現場の作業内容を電子的に記録し、事務所でも状況を把握しやすくするなど、仕事の管理方法も見直しています。昔からの職人仕事の良さは残しながら、記録や情報共有の方法は時代に合わせて変え、現場と会社の双方が動きやすい環境を整えていきたいと考えています。
年齢や国籍を越え、声を掛け合って仕上げるチーム
職場の雰囲気や、社員同士の関わり方を教えてください。
若い世代から長く経験を積んだ職人まで、さまざまな人が現場で働いています。海外出身の社員も活躍しており、日本語や仕事の進め方を覚えながら、今では現場を支える存在になっている人もいます。年齢や国籍が違っても、同じ面を一緒に仕上げる仲間です。分からないことをそのままにせず、声を掛け合うことを大切にしています。 中には、技能実習生として入社し、その後、特定技能へ移行した社員もいます。現在は特定技能2号の試験にも合格し、ご家族と一緒に日本で暮らしています。その社員の結婚式には、私もベトナムまで足を運びました。仕事だけの関係ではなく、社員の成長や人生の節目も一緒に喜び、できる限り応援したいと思っています。 左官は一人の技術が目立つ仕事に見えますが、大きな現場ほどチームワークが必要です。材料が乾く前に作業をつなぎ、全体を同じ状態に仕上げるには、周囲を見る力が欠かせません。また、家庭の事情などがある社員には、状況を聞いたうえで、できる範囲で働き方を調整しています。堅苦しく管理するのではなく、それぞれが責任を果たしながら助け合える職場でありたいと思っています。
未経験でも始められる。必要なのは、見て聞いて覚える姿勢
左官の経験がない人でも、この仕事に挑戦できますか?
未経験からでも挑戦できます。実際に、経験のない状態から仕事を覚えてきた社員もいます。入社後は先輩と一緒に現場へ入り、材料の運び方や道具の扱い方など、基本的なことから身につけます。言葉だけで伝わりにくい作業も多いため、まずは先輩の動きをよく見て、自分でもやってみる。その繰り返しが上達につながります。 最初からきれいに仕上げられる人はいません。大切なのは、分からないときに聞けること、教わったことを試せること、そして任された役割を途中で投げ出さないことです。現場では予定が変わることもあるため、周囲の話を聞き、状況に合わせて動ける人は成長しやすいと思います。経験は仕事を続ける中で身につきます。ものづくりが好きで、自分の技術を磨きたいという気持ちがあれば、左官の面白さを感じてもらえるはずです。
仕事に責任を持ち、仲間と次の工程を考えられる人へ
これから入社する方に期待することを教えてください。
左官の技術だけでなく、現場の人と話ができることを大切にしてほしいですね。現場を任されるようになると、その日の作業だけでなく、この先どの場所をいつ仕上げるのか、材料や人数は足りるのかまで考える必要があります。相手の話をきちんと聞き、変化に合わせて段取りを組める人は、職人としても現場をまとめる立場としても活躍できます。 これからも、長年培ってきた技術を次の世代へつなぎ、働く人の生活に合った環境を整えていきたいと思っています。まずは現場に入り、実際の仕事を見て、自分の手で仕上げる喜びを知ってほしいです。一人で完成させるのではなく、仲間と力を合わせて建物をつくる仕事です。責任を持って仕事に向き合い、技術を身につけたい方と一緒に働けることを楽しみにしています。
取材を終えて
床や壁を平らに整え、次の工程へつなぐ。株式会社山本工業の左官工事は、建物の完成度を足元から支える仕事です。こて一本を扱うにも経験が表れ、広い面を仕上げるには仲間との呼吸が欠かせません。決められた品質と工程を守り続ける誠実さと、年齢や国籍を越えて技術を伝える職場。手を動かしてものをつくることが好きな方、仲間と協力しながら一生ものの技術を身につけたい方にとって、成長を実感できる仕事ではないでしょうか。